高齢化社会を突き進む日本において、訪問介護への期待は年々高まっています。家族の負担が大きい在宅介護を支える訪問介護のサービスは、具体的にどのようなものでしょうか。

今回の記事では、高齢者や障害を抱えた方をサポートする訪問介護の「メリット」について注目します。

訪問介護サービスが生まれた背景とは

日本は世界屈指の高齢化社会を突き進んでいます。高齢者が多くなっていくと、加齢にともなうさまざまな病気やけがによって介護を必要とする方は多くなります。生活支援を受けなければ尊厳のある暮らしを実現することが難しい方も多く、家族の手による在宅介護が欠かせない人も多いでしょう。

では、介護を支える訪問介護サービスは、どのような背景で生まれたものでしょうか。

訪問介護の前身となるサービスとは

訪問介護事業が今のように確立される前には、1956年に「家庭養護婦派遣制度」と呼ばれるサービスがありました。戦後すぐから介護におけるサービスは誕生しており、多くの方が利用していました。

戦前から戦後の日本はまだ核家族化が進んでおらず、介護は家族で行う傾向が今よりも圧倒的に強かったのですが、身寄りを失った方や、経済的な事情を背景に家族が仕事に従事する必要があった方には、介護サービスが不足していました。

相談できる相手もいないという状態を支援するために、戦後すぐにこうした訪問介護事業の前身は生まれたのです。

介護サービスの本質とは何か

年齢を重ねたら、できれば穏やかに住み慣れた家で、尊厳を保ちつつ在宅介護支援を受けたいと考える方は多いでしょう。

しかし、介護のプロフェッショナルが24時間体制で見守る施設介護とは異なり、在宅介護には人手や設備面で不足感があることは否めません。排泄や入浴もはかどらず、悩んでいる方は今もゼロではありません。介護サービスの本質は、人間の尊厳を守ることにあると言っても過言ではありません。

自宅で尊厳を保ちながら適切なケアを受けられるようにするためには、自治体や介護の専門家が一体となってサービスを考える必要があります。訪問介護サービスは、介護の本質をしっかりと押さえながら生まれた大切なサービスです。

訪問介護を受けるメリットとは｜在宅介護支援のあり方とは

訪問介護は、介護の専門職であるヘルパーが要介護・要支援者の自宅を訪れ、必要なケアや生活支援を提供するサービスです。では、訪問介護のサービスを受けるメリットとは、どのようなものでしょうか。以下の3つで解説します。

１．在宅介護を支援できる

訪問介護を受ける方は、介護や支援が必要だと認められている方です。そのため、訪問介護によるサービスが得られない場合は、家族などが中心となり、支援を行う必要があります。

しかし、介護には大変な労力がかかり、家族にとって重い負担となるものです。介護が必要となった結果、家族のために離職したり転職したりする必要があるケースも散見されます。

在宅介護を完全に網羅はできないものの、訪問介護のサービスがあることで、重い在宅介護の現実を支えられます。

２.社会的孤立を防ぐ

自宅で在宅介護を必要とする方は、不便な生活を強いられていることが多く、家族も要介護者も、心に重い負担を感じている場合があります。訪問介護のサービスは第三者であるプロフェッショナルが介入することとなるため、困難な介護の現場に息吹を与え、社会的な孤立を防ぐ効果もあります。

３．生活援助も得られる

一般的に介護と耳にすると、身体介護のサービスが中心であると想像しがちですが、実際に訪問介護サービスには生活援助も含まれます。

在宅介護を必要とする方の多くは炊事や洗濯にも支障が及んでいるケースが多く、生活への支援も必要としています。訪問介護は入浴や食事などの介助だけではなく、住まいを介護者向けに整えてくれるサービスも含んでおり、尊厳のある生活が守られます。

訪問介護員として働くメリットとは

訪問介護は在宅介護を必要とする方が享受するサービスとして大きな魅力がありますが、実は働くヘルパー、訪問介護員側にも大きなメリットがあります。この章では介護業界で働く視点から、訪問介護員のメリットを解説します。

時短勤務がしやすい

訪問介護は自宅に行って介護サービスを実施するもので、夜間業務まで従事する必要がありません。24時間体制で介護を行う施設介護の職員とは異なり、必要な場所に、必要な介護サービスを届ければ良いため、時短勤務がしやすいというメリットがあります。

実際に施設介護では生活に重い負担感があった方のなかには、働きやすさから訪問介護へシフトする方も多くなっています。

初心者から従事できる

訪問介護は介護の資格は必要であるものの、短時間の介護サービスの提供から始められるため、初心者でも従事できます。入浴などの手伝いはもちろん必要となりますが、少しずつ介護の仕事をマスターできることも、大きな魅力です。

コミュニケーションが楽しい

在宅介護は介護を必要とする方に寄り添う仕事であり、生活のなかに入り込んでいくことになります。ときには困難さを感じる可能性はありますが、信頼を得ながら生活を支えていくことは、楽しいと感じるヘルパーも多くいます。

密なコミュニケーションを重ねていくため、施設介護とは違った魅力を感じることも少なくありません。

介護の経験が仕事に生かせる

すでに自身が家族の在宅介護を行っている場合、仕事にその経験を生かせます。訪問介護の現場には、実際に自宅での在宅介護経験者が多くなっており、介護業界そのものは未経験であっても豊富な経験から実力のあるヘルパーとして成長していく方が多くなっています。

介護の資格を取得しながら過去の経験を生かすことで、介護業界のプロフェッショナルを目指すことも可能です。また、家事や介護で社会人経験が少なかった方でも、その経験は決して無駄なものではなく、価値のある就労経験として生かせることも、訪問介護員の魅力でしょう。

まとめ

この記事では、訪問介護についてサービスを受けるメリットの視点から詳しく解説しました。

訪問介護のメリットは多岐にわたっており、生活が困難に陥りやすい場面を生活援助と呼ばれるサービスを通して救済するメリットは非常に大きいものです。一方で、訪問介護員の働き方にもメリットはあります。ぜひ本記事を参考に、訪問介護員にも注目してください。